テーマ106 実践しないと身に付かない
■人間の脳は、実践してみないと、なかなか身につかない
脳科学者の茂木健一郎氏の著書「脳を活かす仕事術」
の中に下記のような文章があります。
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感覚系(入力)と運動系(出力)は脳内でつながっていない。
このため、感覚系(入力)と運動系(出力)
の連携を行うためには出力が欠かせない。
感覚系回路からインプットした情報を運動系回路
を通して一度外部に出力し、再び感覚系回路で入力する、
このサイクルが成立して初めて、感覚系と運動系が同じ情報を共有できる。
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これは、別の見方をすると、
一橋大学名誉教の野中郁次郎氏が提唱しております知識創造は、
「暗黙知」と「形式知」の相互変換運動であるという
言葉とも共通するかと思います。
*暗黙知:経験や勘に基づく知識のことで、
個人はこれを簡単に言葉にされていない状態でもっている。
*形式知:文章や図表、数式などによって説明・表現できる知識のこと。
野中郁次郎氏は、
「野中郁次郎、勝見明 共著 全員経営 日本経済新聞社 2015年発行」の中で、
今に時代は一人ひとりの実践力、知的機動力が求められている。
本田宗一郎氏の口癖である
「やってみもへんで、何がわかる」が大切と言っています。
NPOマネジメントスクールが主催しております管理職研修の中でも、
管理職者の方に、実際に自分で立てた計画を実践して頂くと、
管理職者の方は、苦痛や挫折感、面白み、達成感、満足感など
人としてのいろいろな感情が生まれると共に、
今まで考えつかなかった仕事上のアイデアも
いろいろと出てくることを体験します。
実践する前は、「これは、できそうもない」とか
「それは、行っても意味がない」などと言っていても、
実際に実践してみると、思い通りにいかない中で
いろいろと試行錯誤を行い、その中から、アイデアがでる
といった繰り返しの中で、目標が達成されていくことを経験します。
また、それは、部下の方も同じで、上司として、
仕を通じて成長していく部下の変化を
目の当たりに見ることもできます。
好むと好まざるとに関わらず、人間の脳は、実践してみないと、
なかなか身につかないようになっていることを理解することが必要です。
実際に行ってみることの積み重ねによって、
経験に裏づけられた重みのある言動も身につけることができます。
■分析的経営手法への過剰適応はやめ、
機動力ある行動が理屈として必要なことを認識する
研修の中で、非常に多いのが、管理職者として、
本来、今、行うべきことが分かっているにも関わらず、
何か新しい取組みを始めようとする場合、
必ずと言っていいほど、
「まず、現状の仕事を棚卸して、課題点を整理してみる」
と皆さんがおっしゃることです。
結果的に、分析だけに時間を取られて、
本来、行うべき取り組みが、遅々として行われない
という状況になることをよくお見受けします。
「日々仕事を行っていて、課題点が分からないなどというのは、
おかしな話ですよ、まずは、管理職者として、
本来、今、行うべきことをすぐ行ってみることが大事です」
と私は、お話しします。
先ほどご紹介させて頂きました野中郁次郎氏の
全員経営の本の中にも、
日本経済の活力低下、弱体化の原因は、
分析過多、計画過多、コンプライアンス過多という
欧米流の分析的経営手法への
過剰適応のせいとも述べられております。
分析をする、その上で計画を立てて実行するということは、
大切な基本ではありますが、
管理職者の方は、上記のように、
欧米流の分析的経営手法への過剰適応はやめ、
まずは、行うという機動力ある
行動が理屈として必要なことも認識すべきです。
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